2019年03月15日
エイジングケア
がんを減らした米国、減らせない日本
アメリカ医療の転換 栄養学の重視へ
今から40数年前の1977年、アメリカ上院栄養問題特別委員会から5000ページを超える膨大なレポートが発表されました。いわゆるマクガバンレポートです。ごく簡単に要約すれば、結論は次の2つです。①がん、心臓病、脳卒中などアメリカの6大死因となっている病気は、現代の間違った食生活が原因で起こる「食源病」である。②現代の医学は薬や手術といったことだけに偏り過ぎた、栄養に盲目な片目の医学であった。栄養に盲目でない医学につくり変える必要がある。
そして、それまで本格的な栄養学のコースを持つ医大などが無かったアメリカは、栄養学を持たない医大は時代遅れと見なされるように変わります。
当時のアメリカでは巨額の医療費が注ぎ込まれているにも関わらず、がん、心臓病をはじめ多くの病気が増えていたため、根本的な対策を立てないことには国が病気で滅んでしまう、という危機感からこのレポートは発表されました。
日本とアメリカの明白な差
対して、現在の日本医療の実態を皆さんはどう考えますか?国の税収は簡単に増えないのに、2017年度の医療機関に支払われた概算医療費は前年より9500億円増え、42兆2000億円。医療費の増加で国の財政は破綻寸前です。そして日本の医学は今でも薬や手術に重きを置いており、本格的な栄養学のコースを待つ医大などは聞いたことがありません。この状況は、マクガバンレポート以前のアメリカに酷似しています。
現在、両国の、がんや心臓疾患の推移はどうでしょうか?下のグラフから分かるように、日本人のがん(悪性新生物)や心臓疾患の死亡者は減らないのに対し、アメリカでは激減しています。食の大切さが一目瞭然です。
▼日本/主要死因別にみた死亡率の推移
▼アメリカ/標準化死亡率の推移(男性) OECD
人間の生きていく根幹は、クスリではなく食にあるのです。日本でもクスリ重視の医療から栄養学を中心とした医療に早急に転換してほしいものです。更に、私たちは自分の健康を自分で守る為、食に対する知識を身に付ける必要があります。厚生労働省の生活習慣予防対策の標語も言っています。「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後に薬」。心に留めて生活しましょう。
参考文献:『いまの食生活では早死にする』タツの本 今村光一 著
コラム筆者:元井益郎
薬学博士/薬剤師/NR・サプリメントアドバイザー/日本抗加齢医学会認定指導士。
東京薬科大学薬学部卒業。ジェーピーエス製薬株式会社入社・退社後、サンプライズ株式会社設立。東京大学や慶應義塾大学など、国内の著名な大学機関と抗加齢に関する共同研究を行い、研究結果をもとにサンプライズ製品の開発を行う。
趣味は山登りとマラソン。72歳になるが、自称年齢は54歳。2017年6月、デナリ(マッキンリー)に登頂成功。好きな言葉は、「過去は変えられないが、未来は変えられる」。