2019年05月24日
エイジングケア
クスリを飲まない薬剤師
私は薬剤師ですが、クスリを飲まないようにしています。ただ、クスリの薬効を否定しているわけではありません。いざ自分が本当にピンチの時は、お世話になるつもりです。
クスリが効かなくなる!?
なぜそのような考えになったのか?その一つのきっかけは、尊敬していた先輩薬剤師の死です。ある時、彼は肝臓の具合が悪いということで入院しました。しかし一週間も経たないうちに若くして死亡したのです。大変なショックでした。
どうして急に亡くなったのか?彼は薬局の息子さんで、普段からクスリを多用していました。結果、身体に耐性ができ、いざという時にクスリが効かなかったのです。
それ以来私は、安易にクスリを飲まないと決めました。風邪を引いた時などは、美味しいものを食べ、卵酒などを飲み、早く寝て休養し、私たち自身が持っている免疫治癒力に期待します。回復も早く感じます。
クスリを飲み過ぎている日本人
もう一つの理由は、日本人はあまりにも安易にクスリを飲み過ぎていると感じるからです。世界の人口に占める日本人の割合は1.7%ほどですが、厚生労働省の調査によると、日本の医薬品市場規模は世界のおおむね10%です。
例えば体調が悪いとき、お医者さんに行くとします。検診を受けた結果「特に原因は分かりませんでしたが、とりあえずおクスリを出しておきました」と言われます。それに対し多くの皆さんは、何ら疑問も感じず、ありがとうございます、と受け取る。こんな会話が普通ではないでしょうか?原因がはっきりしないのに、なぜクスリが出るのでしょう?逆に処方されないと、あの医者はクスリも出してくれない、と立腹されることもあるかもしれません。このように国民全体が、クスリにはその反対のリスクがあるのに、それを考えません。
また血液検査などで、血圧の数値やコレステロールの数値が、その時少し高いだけでも、すぐクスリが処方されます。そして調剤薬局で薬剤師さんに「血圧のクスリとは一生のお付き合いになりますから、気長に続けていきましょう」などと言われ、クスリ漬け生活が始まります。こんな事例が多々あります。
私も過去にこんなことがありました。アンチエイジングドックの先生の研究における、日本人のデータ収集に協力したときのことです。検診結果は総コレステロールがやや高めでした。それに対し「クスリを出しましょう」と言われたのです。私は、やや高めの方が健康で長生きするという研究データを知っていたので、先生の提案はお断りしました。だからといって今日まで健康トラブルはありません。
このように日本では、患者さん側、医療側共に、クスリを安易に使う慣習があります。また患者さんに数多く処方された高価なクスリが、飲まれず大量に捨てられるという問題もあります。
クスリの前に、食生活や運動など生活習慣の見直しで、クスリに頼らない考え・行動をして欲しいと考えます。これは国の医療費の低減化にも繫がります。
コラム筆者:元井益郎
薬学博士/薬剤師/NR・サプリメントアドバイザー/日本抗加齢医学会認定指導士。
東京薬科大学薬学部卒業。ジェーピーエス製薬株式会社入社・退社後、サンプライズ株式会社設立。東京大学や慶應義塾大学など、国内の著名な大学機関と抗加齢に関する共同研究を行い、研究結果をもとにサンプライズ製品の開発を行う。
趣味は山登りとマラソン。72歳になるが、自称年齢は54歳。2017年6月、デナリ(マッキンリー)に登頂成功。好きな言葉は、「過去は変えられないが、未来は変えられる」。