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2016年02月25日

エイジングケア

これから先の人生、あなたはどのパターン?

先日、栄養学のセミナーに参加しました。

今回は、そのセミナーで紹介された事例についてご紹介しながら、皆さんと一緒にこれから先の人生について考えてみたいと思います。

 

皆さんご存知のように、現在日本は高齢化が進んでいますが、平均寿命は世界のトップクラスです。

 

今回のセミナーでは、全国高齢者調査の結果が紹介されました。その内容は、日本全国から無作為に抽出された約6000名の高齢者の生活を、20数年間追跡調査したものです。1987年の初回調査から3年ごとに、同じ高齢者に同じ質問をする調査で、これまでに7回行われています。加齢に伴う生活の変化を理解するのが目的です。グラフの縦軸は、高齢者の生活における自立の程度を示し、横軸は年齢です。図の1が男性、図の2が女性の実態を示しています。

尚、これは東京大学の秋山弘子先生らによる信頼のおける調査です。

 

図の1

1-3-2

図の2

1-3-3

 

男性と女性の間にはどのような差異があるでしょうか?

男性では3つのパターンが見られます。2割の男性は70歳になる前に健康を損ねて死亡するか、重度の介助が必要になります。大多数の7割は、75歳ころまでは元気ですが、その後徐々に自立度が落ちて行きます。そして、80歳、90歳まで自立を維持する人が1割います

女性は、約1割が70歳位から重度の介護が必要となります。そして実に約9割の人たちが70代半ばから緩やかに自立度が落ちて行きます。

 

男性は脳卒中など疾病によって急に動けなくなったり、死亡する人が多く、女性は専ら骨や筋力の衰えによる運動機能の低下により、自立度が徐々に落ちて行きます。

 

皆さんは、この2つの図を見て、どのように感じられたでしょうか?

 

私は、女性が男性に比べて、衰弱・病気・痴呆などによる介護期間=健康寿命と平均寿命の差(女性12.4年、男性9.02・・2013年:厚生労働省公表)が、長いことは理解していましたが、男性には、自立を維持する元気な人が1割ほどいるのに対し、女性にはそのような人がいない、つまり自立度を維持し元気なパターンの人がいない事に、正直驚きました。

 

どんな原因があって、このような差が現れるのでしょうか?

 

約9割の女性が経過するパターンである、骨や筋力の衰えによる運動機能の低下が引き起こす自立度の低下には、どうやら男性と女性の生理的違いにも一因がありそうです。

女性は閉経後、ホルモンバランスが崩れ、急激に骨量減少がおきます。

人の一生と骨量

日本人女性は65歳を過ぎると約半数が(ちなみに男性は75歳を過ぎると約20%が)骨粗鬆症に罹るといいます。それを防ぐ大切な栄養素がカルシウムです。しかし、日本の飲み水や野菜にはカルシウムが少なく、どの年代もカルシウム不足といわれています。また、骨の形成にはカルシウムだけでなく、ビタミンDやビタミンKも必要ですが、昨今の紫外線(日光)性悪説によって女性は日光を強く敬遠するため、ビタミンDも不足しがちです(ビタミンDは食品からも摂取できますが、日光を浴びることにより体内でも合成されています)。

 

骨粗鬆症は骨がスカスカな状態ですので、転ぶだけで骨折します。筋肉量が少なくなることで転びやすくなり、すぐに骨折。治るまでの間安静にしていることにより、さらに筋肉が落ちるため、骨折から回復しても自分で立てなくなり、寝たきりになるのです。たかが転倒と、甘く見てはいけません。

 

これは自立度低下パターンの一例ですが、衰弱・病気・痴呆なども、日常の考え方や行動、栄養バランスの良い食事などでリスクを軽減することは可能です。

 

例えば、衰弱や病気は、楽しい目標を持って、しっかり栄養を摂り、運動をすること。運動することがストレス発散に繋がり、良い睡眠にも繋がります。

 

痴呆については、「ナン・スタディ(修道女研究)」という有名な研究があります。
この研究の協力者のひとりで、101歳で亡くなったシスター・マリーは、認知症と見られる症状もなく、亡くなる直前まで知能テストで高得点を獲得していました。ところが、死亡後の病理解剖では彼女の脳はアルツハイマー病にかかり、脳の委縮が進んでいたのです。
アルツハイマー病にかかりながらも、認知症と見られる症状が発現しなかった理由は、これは仮説ですが、彼女が若いころから老年期に至るまで、知的な活動を活発に行っていたからではないか、と言われています。この研究により、頭を良く使う生活をしていると、アルツハイマー病になっても症状が出てこないのではないかと考えられています。詳しくは過去のコラム『家族のためにも。認知症を予防しよう。』(アメブロへジャンプします)をご覧ください。

 

さぁ、あなたは今、どのパターンを進行中ですか?

80歳、90歳になっても自立を維持する女性を目指し、この図にない第3パターンを作りましょう!

そのためには、トキメク目標を持って、骨や筋肉を丈夫に鍛えるための栄養をしっかり摂り、継続して運動すること。運動は骨や筋肉の強化だけでなく、脳も鍛えます。読書などの知的活動も大切です。

これから先の人生が、どれほど変わるか想像してみてください。

160223健康寿命

 

参考文献:

『健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック』第一出版(独)国立健康・栄養研究所 監修

『脳を鍛えるには運動しかない!』 NHK出版 ジョンJ.レィテイ

 

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※番外編コラム筆者紹介
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サンプライズ株式会社
代表取締役社長:元井益郎
薬剤師、NR(栄養情報担当者)、日本抗加齢医学会認定指導士。
1946年生まれ。東京薬科大学薬学部卒業。ジェーピーエス製薬株式会社入社・退社後、サンプライズ株式会社設立。東京大学や慶應義塾大学など、国内の著名な大学機関と抗加齢に関する共同研究を行っている。趣味は山登りとマラソン。

元井 益郎

薬学博士/社長

1分も走れないペンギン歩きから、世界7大陸最高峰を目指す70代に。

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