2017年02月10日
エイジングケア
時には医者を疑ってみる???
医学の定説は常に更新されている
「医学の教科書に書いてあることの半分は、将来、間違っていることが証明される」・・・これは、「医学部の最高峰」と呼ばれるハーバード大学で医学部長を務めたシドニー・バーウェル博士が、卒業式で学生を戒めた言葉です。
医学部で学んだことをいつまでも信じ切って実際の診療にあたると、患者を治すどころか逆に害することになる。医学は進歩し、真理は常に更新され続ける。
バーウェル博士の発言の意図は、「医師は、医学の進歩を日々学習し、最新の適切な診療によって間違いを犯さないように努力しなさい」ということです。今回は、博士の意図するところと実際の日本の医療とのギャップについて述べたいと思います。
古い定説を信じ、新しい研究成果を知らずに、治療を施す医者もいる
例えば、大腸がんについて。26~27年前は、大腸ポリープはすべて大腸がんになるというのが定説で、大腸内視鏡検査でポリープが発見されればすべて切除をしていました。
しかし、今は違います。大腸内視鏡で発見される5ミリ以下の大腸ポリープは、ほとんど大腸がんにならないことが証明されているのです。そのため5ミリ以下のポリープは切除しないで経過観察することが多くなってきています。
ところが、大腸内視鏡を専門とする医師のなかには、「大腸ポリープはすべて大腸がんになる」と未だに信じている人が多い。そのような医者にかかると、毎年検査を行い、発見されたポリープはすべて切除されます。
同じようなことが前立腺がんについても言えます。前立腺がんではない、他の病気で死亡した人を死体解剖すると、その年齢とほぼ同じ比率で前立腺がんが見つかる。
つまり、前立腺がんではない病気で死亡した70才を100人解剖すると、70%=70人に前立腺がんが見つかる。この70人は、前立腺がんであったにも関わらず、前立腺がんによって死亡したわけではない、というわけです。
前立腺がんは、放っておいてもそれによって命を落とすことは稀なのです。
ところが、最近、前立腺がんの腫瘍マーカー検査がおこなわれるようになり、中高年で前立腺がんが早期に発見されることが増えました。
多くの専門医は「早期の前立腺がんです。早く見つかってよかったですね」と、手術や放射線治療をすすめる。過剰医療の典型です。
そして、放っておいても命を落とすことは稀であるにもかかわらず、早期に見つかってしまったが故に、手術や放射線治療をするはめになり、副作用に苦しむケースが多々起こると言います。
実際に、これと同じような事が私の身近でも起こりました。2人の例を挙げてご説明します。
主治医の提案を断る患者、主治医を盲信する患者
1人目は、Kさん(男性)。サプリメント等を分かりやすく解説する書籍の出版社を経営されています。
50代に肺がんが見つかり、医師から手術をすすめられましたが、当時ぴんぴんと元気だったこともあり、必ず完治する保証がないのであれば・・・と、手術を断りました。抗がん剤も、大変な副作用があることを知っていたので使用しませんでした。
そして、自分の肺がんに「さゆり」と名前をつけ、「これ以上大きくならないでね」と語りかけながら、がんと共存する道を選び、自分の知識の中からキノコのサプリメントを選択して飲みました。
何年か経過した60才過ぎに、今度は前立腺がんと診断されます。同じく、手術をすすめられましたが、やはり断り、キノコのサプリメントを増やしてしっかり飲むようにし、尿の出を良くする薬だけ使いました。
Kさんは、最初のがんが見つかって以来20年ほどになりますが、今も元気で活躍しています。
2人目は、Uさん(男性)です。2年ほど忙しくて健康診断を受けずにいたら、62才の時、PSA(腫瘍マーカー)が上がったといわれ、手術をすすめられました。
Uさんは病院へすべてお任せすることにし、手術はすぐにすみましたが、排尿コントロールがやっかいで1ヶ月ほど入院しました。
術後、少し落ち着いたらホルモン剤注射が始まりました。性機能や性欲の低下、乳房がふくらむ、皮下脂肪がついて体重が増えるといった副作用に悩まされます。3年で体重は15Kg増え、顔が丸くなり、久しぶりに会う人からは「別人のよう」と驚かれたといいます。
そしてUさんは、手術から約7年後にがんでお亡くなりになったことを新聞記事で知りました。いつもニコニコしていた笑顔が忘れられません。
2人の結果は正反対になりました。たった2人の例で何かを断言することはできませんが、私の考えでは、Kさんは長年サプリメント等の出版活動をしていたため、国内・外の情報収集や勉強をされており、それが良い結果としてあらわれているのではと思います。
知識を深めていることが、病院任せではなく自分で判断して行動することにつながっているからです。
一方のUさんは、主治医に従ったにも関わらず、お亡くなりになってしまいました。もちろん、手術をして成功する例もあると思いますが、先述のとおり、前立腺がんは見つかっても死亡する人は少ないといいます。
もし、手術やホルモン療法をしなかったら、今でも元気だったのではないか、これこそ過剰医療の医療被害なのではないか、と考えてしまいます。
自分の身を守るのは医者ではなく、自分の知識と行動です
医療被害から逃れるためには、医療を受ける側が、医師を盲信せずに自らの知識を深めて自己防衛することが大切です。病気だけではなく、アンチエイジング医学などについても、CMやTVで得た1つの情報を鵜呑みにせず、色々な書籍や新聞等を含めた幅広い知識をベースに判断することが重要です。
今回は岡部哲郎先生の書籍『病気を治せない医者』から多くを引用させて頂きました。この書籍は日本の医療の欠陥や問題点を解りやすく解説してありますので、ぜひ一読をおすすめします。
参考文献:『病気を治せない医者』光文社新書/岡部哲郎著
コラム筆者:元井益郎
薬学博士/薬剤師/NR(栄養情報担当者)/日本抗加齢医学会認定指導士。
東京薬科大学薬学部卒業。ジェーピーエス製薬株式会社入社・退社後、サンプライズ株式会社設立。東京大学や慶應義塾大学など、国内の著名な大学機関と抗加齢に関する共同研究を行っている。趣味は山登りとマラソン。70歳になるが、自称年齢は52歳。年間に4回ほどフルマラソンへ出場し、4時間以内に完走することもある。登山では世界7大陸の最高峰を制覇することを目標とし、既に4つ登頂成功。2017年はデナリ(マッキンリー)に挑戦する予定。トキメクような目標をモチベーションに、アンチエイジングを体現している。好きな言葉は、「過去は変えられないが、未来は変えられる」。