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2015年07月23日

エイジングケア

運動すると、早死にする・・・!?

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「スポーツは体にわるい」、「健康な人は運動しない」などの書籍が、書店に並んでいます。また、TVで「運動すると早死にします」と発言するお医者さんまでいます。

 

私もマラソンやトライアスロン(こちらは初心者)をやっていますが、大学病院の先生から「マラソンは止めた方が良い!」と言われたことがあります。その根拠は、マラソンをやっていて、大学病院に救急車で搬送されて来る人が多いというのです。

 

そこで今回は、「運動は本当に体に悪いのか?」について述べたいと思います。

 

日本では、東京マラソンが始まって以来、ここ十年ほどでマラソン人口が急激に増加しました。インターネットで受付を行い、定員になったら締切り、という募集方式の大会では、二万人に近い大会でさえも、受付をスタートしてから一時間足らずで定員に達し、ハイ終了!というようなケースが多々あります。抽選タイプの大会では、定員に対して応募者が何倍にもなる大会も数多くあります。それほど、マラソン人口は急激に増えています。

 

急激に増えたマラソン人口の中には、取りあえず申込みをしたら当選した、という人もいるでしょう。多くの人が涙をのんだ中、自分は狭き門に入れた・・・しかし、マラソンの練習などしたことがない・・・そして一念発起、「頑張るぞ!」と気合を入れ、張り切って走る。ところが心臓はビックリ!結局、救急車へ・・・というような例も、中にはあるのではないでしょうか?

 

こういったケースでランナーが倒れてしまう主な原因は、活性酸素やストレスが考えられます。

走るときにはエネルギー生産をするため、私たちの体はたくさんの酸素を必要とします。それに伴い、活性酸素が体内に大量に発生します。

ストレスの場合は、以下のようになります。活発な運動はしばらくしておらず、平静な生活の中で平静に動いていた心臓。そこに、「昔、自分はスポーツマンだったのだ!」と、若い頃のイメージで張り切って走り出し、頑張り過ぎてしまう。この場合、心臓には大変なストレスが掛かります。

活性酸素もストレスも、その人の許容を超えれば、人は倒れてしまいます。そのまま命を落とす場合もあるのです。

原因
ここで、改めて活性酸素とストレスについて考えてみましょう。

 

私の尊敬する日本抗加齢医学会理事長、慶応義塾大学医学部眼科教授でもある坪田一男先生は、活性酸素に対してこう仰っています。

「日々少しずつ、自分の年齢や体力にあった運動をすることで、細胞のエネルギー生産を担うミトコンドリアの質や量が向上する。すると、活性酸素を除去する酵素の働きが向上する。その結果、活性酸素に対抗する力が高まることがわかってきました」

また、ストレスについては、「一般的に有害とされるストレスも適度にあった方がかえって健康にプラスに働くという考え方があります。これは『ホルミーシス仮説』と呼ばれるもので、アンチエイジングのひとつの重要な理論です。まったくストレスのない状態よりも、人間は許容できる範囲のストレスを受けることで、それに対抗する能力が高まるのです。」と仰います。

 

ストレスについては、これを裏付ける話を私も聞いたことがあります。

 

北欧で、漁場から港まで生きたまま魚を運ぶ際の、魚の生存率を高める方法です。

それは、違う種の魚や、天敵となるものを一緒に入れて運ぶというのです。

例えば、いわしを運ぶ際は、いわしのみで運ぶより、いわしを餌とする魚を一緒に入れておくと緊張感が出て、いわしの生存率が上がるというのです。

 

人間社会でもこんな例があります。ある人は、日々、ストレスを抱えながらも一生懸命に働き、ある日、定年になりました。

その翌日からは、毎日が日曜日(毎日サンデー)という状態になり、ストレスのない生活になる。しかし、あっという間に老け込んでしまう。このような人を、私は、今までたくさん見てきました。皆さんもそんな人をご存じではないでしょうか?

 

人間も魚も、適度の緊感、ストレスが必要なのですね!

 

結論です。

運動することが悪いのではなく、その人の許容を超える過度な運動が事故に繋がるのです。

 

それでは、自分に適した運動、適量の運動とは・・・これはまさに千差万別です。個人個人で、体力もストレス抵抗力も違うので、それぞれの適量は異なります。日頃、たくさん運動している人とあまり運動をしていない人では、適度となる負荷も異なるのです。

 

それでは、無理なく事故に繋がらないための運動は、どのようにしたら良いのでしょうか?また、どう増やして行ったら良いのでしょうか?

 

久しぶりに運動する方や初心者へ、オススメの方法は『尺取虫継続方法』です。少ない負荷からはじめ、一歩一歩前に進む、そして、その継続です。

 

私は20年ほど前、腰痛で1分も走れませんでした。

それが10分走れるようになり感激、そして、数年後は10km走れるようになり、次はハーフマラソンに挑戦、それを3年ほど継続。

その次はフルマラソンを5~6年、そして、今年は高低差が300mもある超ハードコース南アフリカ・ケープタウンのウルトラマラソン56kmを完走しました。

 

ここまで来るのに約20年かかりましたが、私の自慢は、ウルトラマラソンの完走ではなく、この間に一度も故障したことがないという事です。

20年間、尺取虫のように少しずつ少しずつ負荷を増やしてきました。低い階段を少しずつ上がる。長い年月の間に、知らぬ間に大きな力がついたようです。

尺取虫継続法
私の経歴は、いきなりマラソン大会の抽選に当たり、にわかに練習して出場というような経歴ではありません。もっとも、腰痛持ちだったのでそれは出来なかったのですが・・・。

私の腰痛は、運動時間が増えるのと反比例していつの間にか完治し、現在の体調は、すこぶる良い状態です。そもそも私の20年前の腰痛は、運動不足からきた腹筋、背筋の衰えが原因だったのです。

 

人類の長い歴史の99.99%以上は、獲物を追って『歩く走る』歴史です。歩かない、走らなくなったのは、交通手段が発達した、ここ100年にも満たない僅かな歴史なのです。

冒頭の「運動は体に悪い」「運動すると早死にする」という考えは、交通手段などに甘え、身体を動かさない怠惰な生活の更なる悪化に繋がるのではないでしょうか?それこそ、運動不足からくるメタボや腰痛持ちが増えるのではないでしょうか?

 

アンチエイジングを目指す皆さんには、一部の医師の言葉に惑わされることなく、運動・スポーツは継続してほしいものです。但し、張り切り過ぎは禁物ですよ!『尺取虫のように一歩ずつ。そして、その継続が力なり』です。

 

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※番外編コラム筆者紹介
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サンプライズ株式会社
代表取締役社長:元井益郎
薬剤師、NR(栄養情報担当者)、日本抗加齢医学会認定指導士。
1946年生まれ。東京薬科大学薬学部卒業。ジェーピーエス製薬株式会社入社・退社後、サンプライズ株式会社設立。東京大学や慶應義塾大学など、国内の著名な大学機関と抗加齢に関する共同研究を行っている。趣味は山登りとマラソン。

元井 益郎

薬学博士/社長

1分も走れないペンギン歩きから、世界7大陸最高峰を目指す70代に。

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