2022年12月22日
エイジングケア
日米のがん医療における大きな違い
がんの死亡者が減っているアメリカ
前回のコラムでは、人気漫画「JIN―仁―」を題材にして現代と江戸時代の医療における圧倒的違いなどを紹介しました。
今回は関連して、がん医療に対する日本とアメリカの違いを紹介します。次のグラフのように、日本のがんは死因第一位で高止まりの状態ですが(図1)、アメリカでは減ってきています(図2) 。
▲図1:日本人の主要死因別にみた死亡率の推移(厚労省)
▲図2:アメリカのがん死亡率の推移(男性)
アメリカでがんが減るきっかけとなったのは、1977年にアメリカで発表されたアメリカ合衆国上院特別栄養委員会報告書(マクガバンレポート)であるといわれます。このレポートの概要は以下の通りです。
①がん、心臓病、脳卒中など、アメリカ人の主な死因となっている病気は、間違った食生活が原因で起こる“食源病”である。②現代の医学は薬や手術だけに偏り過ぎ、栄養には関心を払ってこなかった。新しい医学につくり変える必要がある。
これをきっかけに、アメリカでは肉食中心の食生活が見直され、健康に良いとして日本食などに関心が集まりました。サプリメントも法的に整備され、国家レベルで漢方薬やハーブ療法等を活用した代替医療にも取り組んでいます。
また医学部に栄養学のカリキュラムが設けられ、まずは食事から見直す「食育指導」に真剣に取り組むようになりました。さらにがん患者さんに対しては、医師、薬剤師、栄養士らがチームを組み、広い知識や視野でさまざまな治療を行っています。これらが功を奏し、がんの死亡率が下がったのです。
日本とアメリカの大きな違い
一方、日本では医学部に栄養学のカリキュラムが少なく、それらの知識の乏しさからか、医師から栄養学を活用した食育指導などの話は滅多に聞きません。
検査などの数値が悪い場合、食育指導ではなく、多くが薬を使用する「服薬指導」に始まり、外科、放射線、化学療法での治療となります。この違いが上のグラフのように現れるのではないでしょうか?
日本がこのような現状であるなら、私たち自らが栄養学などを勉強しましょう。知識の有無が命に係わるといえるのです。