2016年12月25日
ヘアケア
薄毛や抜け毛、睡眠が原因?
よく眠れないのは、髪にとっても大問題
最近、「夜、寝つきが悪い!よく眠れない!」「寝つきに良いサプリメントはありませんか?」という相談を多く受けます。
睡眠が不足すると、身体のエネルギー代謝が滞り、ダメージばかりが溜まります。このような時は生命維持に直接影響のない頭髪には、エネルギー分配が後回しにされ十分に運ばれません。するとエネルギーを得られない毛母細胞は細胞分裂ができず、髪は正常に育たなくなります。
また、髪の成長には成長ホルモンが関わっていますが、このホルモンの分泌が盛んなのが、夜の10時頃から深夜の2時頃と言われ、髪はこの時間帯に最も成長すると言われています。つまり、髪のためにはこの時間帯にしっかり眠っていることがベストです。
寝つきが悪いだけでも苦痛なのに、髪の発育にも悪いのですから、対策を講じる必要があります。寝つきが悪くなってしまう原因は何なのでしょうか。
睡眠のリズムを狂わせる夜間のブルーライト
睡眠の質の低下を招く原因の1つに、「ブルーライト」があります。あなたは、夜遅くまでスマートフォンやパソコンを使ったり、テレビを見ていたりはしませんか。スマートフォン、パソコン、テレビ等のLEDから発せられるブルーライトは、寝つきが悪くなる原因になります。
まずお伝えしておきたいのが、「目」には2つの機能があるということです。1つ目は「カメラ」としての機能で、もう1つは「時計」としての機能です。
太陽光にはレインボーカラーの7色がありますが、カメラとしての目は、400~800nm(ナノメートル)の全ての光(可視光線)を捉えており、時計としての目は、380~495nmのブルーライトだけを捉えます。
そして、時計としての目は、ブルーライトがあれば「今は昼だ」と判断し、ブルーライトがなければ、「夜」だと判断しているのです。
人類は長い歴史上、夜になるとブルーライトがなくなるので寝て、朝になると太陽光の中のブルーライトを浴びて目を覚ましていました。ブルーライトが睡眠のリズムに影響を与えているわけです。
ところが近年多く使われるようになったLEDにはブルーライトが含まれています。夜遅くまでスマートフォンやパソコンを見ていると、時計としての目が、「今は昼だ」と認識してしまうのです。1日24時間を周期とする体内のサーカディアンリズム(※)が狂ってしまい、睡眠障害を引き起こしてしまうというわけです。
サーカディアンリズムが狂うと、体温や心拍、ホルモン分泌などの体内リズムも乱れてしまい、睡眠障害だけでなく、うつやメタボリックシンドロームになるリスクも高くなると言われています。
ブルーライトは悪者?そんなことはありません
だったら、ブルーライトを全てシャットアウトすれば良いのでは、とお考えではありませんか。
近年は、「ブルーライトカット」などを謳ったメガネなどが販売されており、ブルーライトが悪者のようなイメージがあります。しかし、そうではありません。
ブルーライトは太陽光に含まれる自然な光であり、昼と夜を認識するために必要な光です。昼間は浴び、夜は浴びないはずのものが、LEDの発達により、昼夜の区別がなくなってしまうことに問題があるわけです。
夜遅くまでスマートフォンなどからブルーライトを浴びていると、脳が覚醒してメラトニン(眠りを誘う睡眠ホルモンの一種)の分泌を妨げ、夜間の深部体温の低下も妨げてしまい、サーカディアンリズムも狂ってしまいます。
結果的に睡眠障害になり易く、髪や頭皮に悪影響を及ぼすことになります。就寝の2時間前からはスマートフォン、タブレット端末、パソコンなどは使わないというのが理想です。
ぐっすり眠れる生活習慣で、寝ている間に美髪育成しましょう
それでは、ぐっすり眠るためのまとめです。髪に悪い生活習慣に気付いたら、今日からでも髪に良い生活習慣へ改善しましょう。
①夜遅くまでスマートフォンやパソコン、テレビは見ないようにしてブルーライトを浴びない。
②成長ホルモンの分泌が盛んになる夜10時頃にはベッド(布団)に入る。これが難しくても、極力、早く寝ることを心がけましょう。少なくとも夜更かしの生活習慣は改める。夜更かしは髪だけでなく肌や身体全体にも大敵です。
③寝る1時間ほど前に入浴はすませ、熱がひいてきたところでベッド(布団)に入ると寝つきが良い。
④適度な運動をするのも良い。
⑤自分のからだにあった寝具で寝る。
⑥ブルーライトをカットするメガネなどの製品もありますが、クオリティの低いものもあります。購入の際は、良く吟味しましょう。
最後に、睡眠障害について、クスリに頼るのはおすすめできません。頼り過ぎて常用すると、体に耐性ができクスリの量が増えていきます。極力、クスリに頼らず①~⑤などの方法で睡眠の質を改善しましょう。サプリメントを使う場合は、添加物の入っていない、自律神経を整える(副交感神経を優位にする、リラックスさせる)ものを選ぶと良いでしょう。
※サーカディアンリズムとは・・・「身体のリズムを整えるための体内時計」や「効率よく生命を維持するためのリズム」と言われます。このリズムが乱れると、体温や心拍、血圧や血糖値、ホルモン分泌などの体内リズムも乱れてしまい、睡眠障害やうつ、肥満や糖尿病、高血圧、心筋梗塞やがんなどのリスクが高くなることが知られています。
参考文献:『アンチエイジング・バトル最終決着』 朝日新聞出版 坪田一男著
コラム筆者:元井益郎
薬学博士/薬剤師/NR(栄養情報担当者)/日本抗加齢医学会認定指導士。
東京薬科大学薬学部卒業。ジェーピーエス製薬株式会社入社・退社後、サンプライズ株式会社設立。東京大学や慶應義塾大学など、国内の著名な大学機関と抗加齢に関する共同研究を行っている。趣味は山登りとマラソン。今年で70歳になるが、自称年齢は52歳。年間に4回ほどフルマラソンへ出場し、4時間以内に完走することもある。登山では世界7大陸の最高峰を制覇することを目標とし、既に4つ登頂成功。2017年はデナリ(マッキンリー)に挑戦する予定。トキメクような目標をモチベーションに、アンチエイジングを体現している。好きな言葉は、「過去は変えられないが、未来は変えられる」。