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2018年09月06日

ヘアケア

出産後の抜け毛はどうして起こるの?どう対処する?

高齢出産が増え、産後抜け毛が回復しないまま、加齢による抜け毛に悩まれる方が非常に増えている印象を受けます。今回は、産後抜け毛とその対策について、育毛専門医の岡嶋研二先生へお伺いしてみました。

 

産後は、抜け毛が増える

薄毛で悩んでいない方でも、出産後に抜け毛が増えることはしばしば経験されます。なぜ抜け毛が増えるのでしょうか?

出産前に薄毛でなかった方は、出産後、抜け毛が増えて髪の毛の量は減りますが、徐々にもとに戻っていきます。

しかし、もともと薄毛であった方、さらに円形脱毛症の既往がある方は、それぞれ出産後に薄毛がひどくなったり、円形脱毛症が再発したりします。そして出産後の改善にも時間がかかります。また逆に、円形脱毛症で悩まれていた方は、妊娠すると改善します。

なぜ妊娠すると脱毛症が改善し、出産すると抜け毛が増えるのでしょうか?

 

産後の抜け毛の増加は女性ホルモンの急激な減少が原因

女性は更年期近くに薄毛になることが多く、これは「女性型脱毛症」と呼ばれます。その原因は、卵巣機能低下による女性ホルモンの産生低下です。

また更年期でなくても、若い年代の女性が女性型脱毛症を発症する場合もあります。

更年期の女性ホルモンの減少は、加齢による卵巣機能低下が原因ですが、若年の場合は、卵巣機能をコントロールする性腺刺激ホルモン、その脳下垂体からの分泌が、ストレスや生活環境によって悪くなることが原因です。

女性ホルモンは、知覚神経に神経成長因子という物質を作らせる働きがあります。その生成された神経成長因子は、知覚神経の機能を高める働きを持っています。

したがって女性ホルモンは、この神経成長因子を増やすことで知覚神経を刺激し、体内のインスリン様成長因子-1(IGF-1)を増やすことになります。

この結果、女性ホルモンが十分に、また規則正しく分泌されていると、 IGF-1が増え、女性の健康と綺麗で十分な量の髪が保たれることになります。

 

女性ホルモンは妊娠で増え出産で急激に減少する

妊娠すると、妊娠黄体(卵巣にある卵子放出後の組織)から、女性ホルモンが産生され分泌されます。妊娠月数が進み2ヵ月目からは、胎盤で女性ホルモンが産生され、出産までその産生と分泌が続きます。

このように、妊娠によって女性ホルモンが増え、結果としてIGF-1も増えるため、妊娠前にあった薄毛や円形脱毛症は改善されます。

しかし出産後は、胎盤の娩出により急激に女性ホルモンが減少するため、IGF-1もまた減少し、抜け毛が増えたり円形脱毛症が再発したりするのです。

 

産後の薄毛や円形脱毛症の再発の治療にもIGF-1を増やす方法が最適

これまで述べたように、女性ホルモンがIGF-1を増やすので、出産による女性型脱毛症の発症や、円形脱毛症の悪化・再発を改善するためには、IGF-1を増やすサプリメントや薬を服用することが最も適した治療といえます。

女性ホルモンそのものの投与は、女性ホルモンの持つIGF-1を増やす作用以外の作用、または生理的な分泌リズムを無視した女性ホルモン濃度の上昇を引き起こし、いろいろな副作用が出ることがあります。

やはり育毛だけの目的なら、女性ホルモンそのものよりもIGF-1を増やす物質の投与のほうが安全でしょう。

 

出産後、子育てのストレスもあり、抜け毛が増えた女性の治療例

40代の女性は、出産後、お子様の病気もあり、抜け毛が増えて額の上の薄毛が気になってきたため来院しました。下の写真(治療前)では、確かに地肌の露出が増えており、女性型脱毛症であると考えられます。

カプサイシン、イソフラボン、そしてタキシフォリンのサプリメントでIGF-1を増やす治療を行うと、治療5ヵ月後には地肌が見えにくくなり、髪の毛も太くツヤが出てくるようになりました。

▼40代女性/女性型脱毛症。左から治療前、治療5ヶ月後。

 

出産後の薄毛の改善のために気を付けること

女性型脱毛症で皮膚科を受診する方もいます。しかし現在の皮膚科治療では、女性型脱毛症は治りません。

皮膚科を受診しても、(年が若くても)“だんだん年を取るから、抜け毛も仕方ない”などと皮膚科医から言われることもあるようです。すなわち出産後の薄毛も、現在の皮膚科治療では治りません。

女性型脱毛症を治療するために男性型脱毛症(AGA)治療の専門クリニックに行くと、ミノキシジルという薬を飲まされることがあります。これは本来、降圧剤で、その副作用で毛が生えるので、AGAや女性型脱毛症の治療に使われることがあるものです。

この薬は、顔にムダ毛が多く生えるばかりか、むくみやめまいなどの副作用が多く、これまでに多くの患者さんが使用を中止しています。

やはりIGF-Iを増やす生活習慣作りやサプリメントの使用が、女性型脱毛症や出産後の薄毛の最も良い治療法になるでしょう。

 

産後の健康障害の予防にIGF-1を増やすことは重要

急激な女性ホルモンの減少は、抜け毛以外にもさまざまな健康障害を引き起こします。

IGF-1には、脳の海馬という認知機能の中枢を刺激し、その部位の神経細胞を増やす作用があります。海馬の神経細胞が増えると、うつ状態も改善することが知られています。

出産後にうつ状態を示す「産後うつ病」は、出産から1ヵ月以内に10~20%という高頻度で起こります。IGF-1の作用から考えると、産後うつ病も、急激な女性ホルモンの減少に伴うIGF-1低下によるものと思われます。

したがって、産後に、IGF-1を増やす生活習慣やサプリメントの摂取の実行は、薄毛の改善以外にも、うつの予防や改善などさまざまな健康障害を改善すると考えられます。

岡嶋 研二

育毛ドクター

名古屋Kクリニック院長。 IGF-1育毛理論の第一人者。

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