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2018年10月12日

ヘアケア

運動で育毛はできるの?

運動は、育毛にどのような影響を与えるか?

運動と育毛の間にはどのような関連があるのでしょうか?育毛はインスリン様成長因子-1(IGF-1)によって促進されるので、この疑問を言い換えれば、運動とIGF-1の関係はどうなのかということになります。

 

IGF-1を増やすには、成長ホルモン分泌を増やすか、知覚神経の刺激

以前述べたようにヒトの心身の成長は、思春期に脳下垂体から分泌される成長ホルモンによってもたらされます。しかし実際に筋肉を増やしたり骨を伸ばしたりする作用は、IGF-1が担います。すなわち成長ホルモンが筋肉や骨などの組織に作用し、そこでIGF-1を増やしてヒトの成長を促すのです。

したがって、体内のIGF-1を増やすためには、成長ホルモンの分泌を増やすか、カプサイシンやイソフラボン、アガリクスなどで知覚神経を刺激することが必要になります。

 

運動は、成長ホルモンの分泌を増やす

成長ホルモンの分泌を増やす刺激には、よく知られているものとして睡眠と運動があります。夜10時から午前2時までの間に睡眠をとると、成長ホルモンの分泌が高まり、IGF-1が増えることが知られています。

また運動も成長ホルモンの分泌を増やすことが知られています。運動には、ウォーキングやジョギングなどのゆっくりとした有酸素運動と、短時間でダッシュするような激しい無酸素運動があります。どちらの運動がよりIGF-1を増やすのでしょうか?

 

太り気味の方は有酸素運動、そうでない方は有酸素運動と無酸素運動の両方

脂肪組織が多いと成長ホルモンが分泌されにくいことが知られています。したがって有酸素運動で脂肪組織を減らすと、成長ホルモンの分泌が進みIGF-1が増えやすくなります。一方、無酸素運動では、筋肉のグリコーゲンが分解されて乳酸という物質ができ、この乳酸が、知覚神経を刺激してIGF-1を増やします。

運動そのものも成長ホルモンの分泌を高めてIGF-1を増やしますが、それに加えて有酸素運動は脂肪の燃焼により、無酸素運動は乳酸の増加により、IGF-1を増やすことになります。今、肥満気味である人は、まず有酸素運動から始めて脂肪を減らし、体重が落ちたら無酸素運動を組み入れた運動をするのがよいでしょう。

 

筋肉トレーニングで筋肉量を増やすと、運動によるIGF-1産生がさらに増加する

これまで述べたように、運動をすると、成長ホルモンの分泌増加と運動そのものによるIGF-1増加が期待されます。

運動を続けると、筋肉の耐久力が上がり、長時間続けられるようになります(運動耐用性の増加)。しかし運動のみでは筋肉は増えません。筋肉を増やすためには、筋肉に持続する負荷をかける持続性トレーニング(ウェイトリフティングや加圧トレーニングなど)を行う必要があります。筋肉量が増えると、以下に述べるように、運動によるIGF-1増加がさらに促進されます。

 

筋肉量が増えると、運動による乳酸増加と体温の上昇が期待される

持続性トレーニングで筋肉へ持続する負荷を与えると、筋肉細胞が増え、またサイズも大きくなります(筋肉の肥大)。

そうすると、筋肉細胞内のエネルギー物質である「ATP」の材料、グリコーゲンやクレアチンリン酸が増えます。

こうなると、運動した際のグリコーゲン分解で生成される乳酸が更に増え、IGF-1をより増やします。また、ATP産生の増加は体温を上昇させるので、知覚神経への刺激が進み、IGF-1が増えやすくなります。

 

運動で薄毛が改善!

写真1は、男性型脱毛症で治療中の男性の頭部です。治療内容は同じでも、ジムに通い始めて1ヵ月で頭頂部の薄毛が改善していることが分かります。

▼写真1:20代男性/男性型脱毛症。左からジム通い開始1ヶ月前、直前、 1ヶ月後。

 

体温が高いほど、育毛効果も高い

体温は、育毛にきわめて重要です。薄毛の人は体温が35℃台や36℃台前半の人が多いようです。平熱が36.6℃~37.0℃であると、育毛効果が高くなります。

写真2は、全頭脱毛(円形脱毛症の重症型)の10代女性の頭部です。全頭脱毛は、IGF-Iを増やす治療でしか治りません。この女性は治療前、体温が35℃台という低体温でしたが(写真・治療前)、治療に伴い体温は徐々に上昇してきました。しかし体温が低いうちは、長い間、毛が生えてきませんでした(写真・治療2年後)。体温が36.4℃くらいに上昇すると、やっと黒い産毛が生えてきました(写真・治療2年3ヵ月後)。そして体温が36.6℃を超えると、3カ月間で著明に改善しました(写真・治療2年6カ月後)。

▼写真2:10代女性/全頭脱毛。左から治療前(体温:35℃台)、治療2年後(体温:36.0~36.4℃)、治療2年3ヵ月後(体温:36.4℃)、治療2年6ヵ月後(体温:36.7℃)

一方、写真3の10代男性患者は、同じ全頭脱毛でしたが低体温でなく、治療前から体温が36.6℃以上ありました。この男性では、治療8カ月で明らかな育毛が見られています。

▼写真3:10代男性/全頭脱毛。左から治療前、治療7ヶ月後、治療8ヵ月後。

このように、運動と筋肉トレーニングでIGF-1を増やして体温を上げると、育毛が期待できます。運動は思いついてやるのではなく、生活習慣として取り入れることが重要です。

岡嶋 研二

育毛ドクター

名古屋Kクリニック院長。 IGF-1育毛理論の第一人者。

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