2019年10月03日
ヘアケア
薄毛とガンを改善する「β-グルカン」って?
前回は、IGF-1(インスリン様成長因子-1)が育毛効果と免疫調整作用を持つので、薄毛とガンの改善には、IGF-1を増やす物質が有用であることを述べました。
今回は、キングアガリクスにも含まれ、ガン患者の間でよく知られている「β-グルカン」について、どのような物質で、どのようにしてIGF-1を増やすか、そしてIGF-1を増やすならば、薄毛やガンの改善以外にどのような効果が期待できるかを、前回よりもさらに詳しくご紹介します。
β-グルカンとは、何か?
β-グルカンは、細菌や真菌(カビ)の細胞壁の内側に存在し、β-D-グルコース(ブドウ糖)が、β1-3結合で結合された多糖体です。β1-6結合(真菌類)やβ1-4結合(細菌類)による枝分かれ構造も持っています。
β-グルカンは、体内に吸収されずに免疫調整作用を発揮する
ネズミにβ-グルカンを食べさせると、そのほとんどは吸収されずに消化管を素通りし、血液中のβ-グルカンは極めて低濃度しか検出されません。
しかしながらこのようなネズミにおいても、β-グルカンの投与後に免疫調整作用が現れるのです。
ヒトでの研究でも、β-グルカンの服用で免疫力の増強は認められるものの、やはり投与したβ-グルカンは、体内には吸収されないことが分かっています。
体内にほとんど吸収されないβ-グルカンの、免疫担当細胞への作用を、シャーレの中の実験で調べた研究もありますが、なんとも虚しい研究成果と言えます。
β-グルカンは、消化管の表面で知覚神経を刺激してIGF-1を増加させる!
体内に吸収されないβ-グルカンが、生体において、どのようにして免疫調整作用を発揮するかは謎のままでした。
しかしこの謎を解く鍵になったのが、私の行った動物実験の結果でした。それは、β-グルカンが、知覚神経を刺激してIGF-1を増やす、という事実でした。
この事実は、次のような可能性を示しています。β-グルカンを摂取して、それが吸収されずに消化管内に留まっていても、消化管粘膜表面で拡散して、消化管粘膜の表面にある知覚神経を刺激すれば、カプサイシンと同じように、体内のIGF-1を増やして免疫調整作用を発揮しうる、という可能性です。
それは、これまでの動物やヒトにおける、β-グルカンの免疫力調整作用の発現のしくみを、うまく説明するものです。
β-グルカンを含むシベリア霊芝(チャガ)は、ガンの治療に使われる
β-グルカンを含む「チャガ」の抗がん作用の研究が、旧ソ連で進み、その抗ガン効果やガンの予防効果が医学的に証明されました。
またチャガには、その他にも、糖尿病改善、高血圧改善、肝腎機能改善、精力回復、アトピー性皮膚炎の改善、老化防止、さらに活性酸素種の消去作用などがあることが判明しました。
チャガの効果は、まさに、IGF-1の様々な健康効果と極めて類似しています。
抗ガン作用を有するチャガに、育毛効果があった
IGF-1を増やすβ-グルカンを含むチャガが、IGF-1を増やして、免疫調整作用を発揮しているならば、チャガは、脱毛症の治療効果も発揮しうると考えられます。
興味深いことに、モンゴルではチャガの抽出物が髪の毛の生育に良いとされ、洗髪に利用されています。
そこでチャガが、育毛効果を発揮して脱毛症治療に有用かどうかを検討してみました。
チャガの飲用で、男性型脱毛症や円形脱毛症が改善!
まず、脱毛症の治療を何も受けていない、男性型脱毛症の50代の男性にチャガ を朝晩の食前に飲んでもらい、その効果を見てみました(写真1)。
チャガ飲用後1ヵ月、2ヵ月で、頭頂部の毛が、飲用前よりも太くなっていることがわかります。
▼写真1:50代男性/男性型脱毛症。左からチャガ投与前、投与1ヵ月後、投与2ヵ月後。
また、カプサイシンやイソフラボンのサプリメントなどで治療中の円形脱毛症の2症例でも、チャガを加えると、明らかにその後の治療効果が高くなっていることもわかります(写真2、3)。
▼写真2:20代男性/円形脱毛症。左からチャガ投与1ヵ月前、投与直前、投与1ヵ月後。
▼写真3:20代女性/円形脱毛症。左からチャガ飲用2ヵ月前、飲用直前、飲用2ヵ月後。
β-グルカン含有サプリメントの、免疫力アップや薄毛改善の他に期待できる効果は?
IGF-1には多くの健康効果があるので、β-グルカンを含むサプリメントでは、いろいろな健康効果が期待できます。
動物実験では、β-グルカンをマウスに投与すると、全身のIGF-1が増え、また認知機能の中枢である海馬のIGF-1も増えました。この結果、マウスの認知機能が改善しました。
この事実から、β-グルカンを含むキングアガリクスの摂取は、育毛効果以外にも、免疫調整作用や認知機能改善効果が期待できるといえます。ガン予防や認知症予防にも有用と考えられます。