MENU

2021年12月02日

ヘアケア

薄毛でも一病息災はある?

一病息災とは、病気後の気遣いだけでなく、実際に治癒力が上がって病気にかかりにくくなること

一病息災とは、一度病気になるとそれ以後は健康に気を使うようになるので、病気にかかりにくくなることだと理解されています。しかし、一度の病気を大過なくやり過ごすと、その後は体の治癒力が上がって病気にかかりにくくなることも知られています。

ウイルス感染における免疫反応は、その一つの良い例です。しかし、これ以外にも次のようなことが知られています。

心臓の冠動脈の血流低下で起こる、心筋梗塞の発症において、前触れである狭心症の発作を起こしている患者さんでは、発作を起こしていない患者さんに比べて、心筋梗塞の範囲がより小さくなります。

また、1回目の心臓の冠動脈の血流低下(虚血:これが心筋梗塞の原因となる)に比べて、2回目以降では、虚血が軽くなります。

確かに、急性心筋梗塞は狭心症などの前触れがなく突然に起こった時の方が、より重症という印象はあります。

このように一病息災とは、病気の後、単に健康への気遣いのみでなく、治癒力が上がることで、病気にかかりにくくなるということでもあるのです。

 

一病息災には、IGF-1が重要な役割を演じる

なぜ、一度病気にかかると、その後はかかりにくくなるのでしょうか?感染症においては、1度目の感染で、ウイルスなどに対する免疫反応の記憶ができるので、2度目の感染では免疫反応が起こりやすくなるからです。

しかし、前述のように一度組織の血流低下が起こると、その後の低下が起こりにくくなり、組織の治癒力が上がることが知られています。

私の研究から、このメカニズムには組織の知覚神経が重要な役割を担うことがわかりました。知覚神経が刺激されれば、IGF-1が増えます。すなわち、血流低下が起こると知覚神経が敏感になるので、次の血流低下ではIGF-1が以前より増えやすくなり、虚血による組織の傷害が軽くなるのです。

狭心症発作では胸痛が起こりますが、これは知覚神経が刺激されている結果ですから、虚血時に知覚神経が刺激されていることは容易に想像できます。

感染症でも、全身の関節痛や筋肉痛などが起こり、全身の知覚神経が刺激され、IGF-1が増えていることになります。したがって、感染症では、免疫反応に加えて全身のIGF-1が増えるので、組織の傷害が軽減されます。

同時に他の慢性疾患があると、これも改善することがあります。実際に、細菌感染症が起こり、がんが改善した例なども知られています。IGF-1は免疫力を高めるので、このようなことが起こるのでしょう。

このように、一病息災とは、ある病気にかかると、その後に病気にかかりにくくなることに加えて、知覚神経が敏感になり、治癒力がアップし、同時に存在する病気もよくなることでもあるのです。

 

薄毛でも一病息災はあるのか?

ある病気にかかってIGF-1が増えれば、もし薄毛が同時にある場合、脱毛症は改善するはずです。事実、このような症例の経験があります。

写真1は、重症の円形脱毛症の女性患者さんが新型コロナウイルスにご主人から感染した前後の頭部写真です。IGF-1を増やす治療を受けていたので、感染症も軽く済みました(37℃台の発熱が2日間のみで、味覚嗅覚障害もありましたが1ヶ月以内に完全回復)。

そして、なんとその後にはそれまでに見られなかった脱毛の改善が見られています。

▼写真1:40代女性/汎発性脱毛。左から治療前、治療2年1ヵ月後(コロナ感染2ヵ月前)、治療2年3ヵ月後(感染直前)、治療2年5ヵ月後(感染2ヵ月後)。

写真2の30代女性も、インフルエンザに罹患後に、明らかにそれまで以上の円形脱毛症の改善が見られています。このように、ある病気をうまくやり過ごすとその後には治癒力がそれまで以上にアップしますし、同時に存在した病気も改善します。これも、一病息災なのです。

▼写真2:30代女性/全頭脱毛。左から治療前、治療4ヵ月後(インフル感染1ヵ月前)、治療6ヵ月後(感染直前)、治療7ヵ月後(感染2週間後)。

 

一病息災達成の必要十分条件は、知覚神経を敏感にして、高い治癒力を有すること

一病息災は、一病で重い後遺症が出たり亡くなってしまったりすると達成できませんので、もともと本来高い治癒力を持っていることが必要になります。そのために、知覚神経を刺激し敏感にしておいて、治癒力を高めておくことが必要になります。

今回お示しした2例も、知覚神経を敏感にしてIGF-1を増やす治療を受けていたからこそ、ウイルス感染症の後に脱毛が改善したのです。

アセトアミノフェン以外の風邪薬(解熱鎮痛剤)や抗ヒスタミン剤(痒み止め)を飲むと、知覚神経の働きが低下するので、治癒力も低下して一病息災を達成できなくなってしまいます。事実、風邪を引いてロキソニンなどの解熱剤を飲むと、かえって風邪が長引くこともわかっています。

 

カプサイシン、イソフラボン、そしてβ-グルカンのサプリメントで一病息災を達成しよう

これまで述べたように、知覚神経を敏感にしてIGF-1が増えやすい状態にしておくことが、治癒力を高めることになり、一病息災を達成できる必要十分条件になります。事実、IGF-1が低下している薄毛の人は、新型コロナウイルス感染症が悪化しやすいことが報告されています。

男性型脱毛症や女性型脱毛症は、IGF-1を増やす治療を中止すると悪化しますが、一度ある程度まで改善すると、その後は治療を弱くしても維持できるようになります。そして、円形脱毛症はIGF-1を増やして一旦治癒すると、その後はストレスなどでも円形脱毛症が起こりにくくなります。

実際に私のクリニックで重症の円形脱毛症が治癒した患者さんは、脱毛薬さえ飲まなければ、再発することは極めて稀です。

このように、薄毛に関しても本来の意味での一病息災があるということになります。この場合、やはりカプサイシン、イソフラボン、そしてβ-グルカンなどのサプリメントの服用で、知覚神経を敏感にしておくことが重要です。

岡嶋 研二

育毛ドクター

名古屋Kクリニック院長。 IGF-1育毛理論の第一人者。

\ この記事をシェア /

pagetop